人間を特別な動物と捉えるのでは無く、牛や羊、チンパンチーなどのたくさんの種類の動物の中の一種と捉えます。ヒト属で唯一現存しているホモ・サピエンスがどのようにして現代まで生き延びることができたのかが書かれています。
この上巻では前書きや著者なりの答えやメッセージは書かれておらず、神の目線でヒトの歴史が語られています。これだけでは著者が何を言おうとしているのかわからないというのが正直な感想です。
「虚構」や「神話」という言葉が何回も出てきます。虚構や神話を語ることは他の動物ではできないことです。虚構や神話があるからこそ協力することができ、生き延びてこれた理由だと言います。
目に見えないものを信じれた結果です。今もみんなは目に見えないものを信じ続けています。これがなかったら文明の発達は確かになかったでしょうし、これからもヒトが生き残るためには必要だと思います。
狩猟採集民は生きていくために必要最低限の食べ物を手に入れるために、移動しながら狩り、食べられる植物を採集するという生活をしてきたようです。サピエンスの数も増え、世界各地に散らばりました。
農業革命は史上最大の詐欺だった!と著者のユヴァルは言います。便利になったはずなのに労働量に対しての見返りが農業革命以前の方が多かったというのです。
確かにその理由を聞いたときは農業革命以前の方が豊かだという根拠は理解できました。
文明が発達した今、そういう生活をすることは現実的ではありませんし、僕は豊かだったという農業革命以前の生活をしたいとは思いません。したいと思う人はいると思います。
農業革命以前の生活が方が豊かだったと思うなら、なぜ戻らなかったのか?と疑問に思いました。
文明とは、人知が進んで世の中が開け、精神的、物質的に生活が豊かになった状態。特に、宗教・道徳・学問・芸術などの精神的な文化に対して、技術・機械の発達や社会制度の整備などによる経済的・物質的文化をさす。
goo辞書より
現在は文明の発達によって便利なものがたくさん産み出され続けていて、もう戻れないことはみんなが気付いているはずです。
携帯電話が無かった時代を語ることがありますが、今は携帯電話やスマホがない生活は考えられません。農業革命の以前の生活が豊かだと気付いた時には、携帯が無い時代に戻れないのと同じように、もう戻れない状態だったのかもしれないという考えに行き着きました。
農業革命が起き食料を蓄えられるようになったので、自由を奪われた家畜たちは、畑を耕す道具を引かされたり、寿命を迎えるまでに食料にされたりするようになりました。
狩られることがあったとはいえ、自由だったし食料を過剰に蓄えることもなかったので、家畜たちには農業革命以前の方が豊かだったはずです。家畜化された動物たちにとっては農業革命は悲劇でしかありません。もしヒトが家畜にされていたらと思うとゾッとしますね。
社会が発展しヒエラルキーというピラミッド状の階層組織ができ、帝国と呼ばれるものが各地で現れたこの頃に貨幣が現れました。
やりとりする量が増え、保管場所の確保や持ち運びが難しくなり、それまでの物々交換の限界がきたから、物に変わるものとして貨幣が生まれたらしいです。
今も社会の拡大は止まりません。仮想通貨の話題もよく聞くようになりました。紙幣を管理できなくなってきたのか、逆に貨幣をこれまでより高い精度で管理しようとしているのかわかりませんが、紙幣に変わるものになるかもしれません。
貨幣は元々は物々交換されていた物です。その物がなくなるということは、物質世界は終わりに向かっているのでしょうか。
帝国を統一しようと侵略し、結局は統一も続きません。これまで生き残ってこれたように、「虚構」や「神話」を語り協力しあって生き残るための統一なのかはわかりません。続きが気になります。
下巻の最初は「目に見えないものを信じる」というところにつながってくるのかもしれません。
下巻に続く
コメント